さようなら、原美術館

 
原美術館はいつも何となく薄暗くて湿度のある影をまとっている。この日もそうだった。初めて行った時から全く印象が変わらない。
 
その影はいつも展示されている作品の存在に深みを与えていたし、時には美術館そのものが作品となって作家の表現をより印象的にしていた。
 
 
そんな原美術館が2021年1月11日で閉館を迎えようとしている。大変残念だが、建物の老朽化とのことだから仕方がない。いや、やっぱり残念。現代アート好きとしてはこういう特色ある美術館で展示を見れなくなるのは本当に悲しいことだ。
 
というわけで現在開催中の「光―呼吸 時をすくう5人」を見に行ってきた。館内は写真撮影禁止だったので感想だけ少し話したい。
 
個人的に面白かったのは佐藤雅晴さんの「東京尾行」。五輪へと向かう東京の姿を撮影し作品にしたもの出そうで、実写映像の一部分をアニメーションに置き換えた映像が次々に映し出される。
 
アニメ化した部分は実写とほぼ変わらない画でよく見ないと分からないくらいの差なのに、一部分だけがアニメになっていると非常に奇妙でものすごく違和感を感じる。そしてまたそこから何かまた物語が始まりそうなワクワク感がありずっと見続けてしまう。
 
佐藤時啓さんの写真作品「光―呼吸」は原美術館と別館ハラミュージアムアークが舞台となっている。長時間露光を駆使してペンライトや鏡を持って歩き回り光と自身の移動の軌跡を記録して制作されたのだそう。
 
特に原美術館の階段や中庭に光があちこち跳ねたり飛び回っている写真はまるで建物が生きていて呼吸をしているかのようで面白い。またあの原美術館特有の湿っぽい”影”を明るく照らしているようにも思える。
 
最後に私が撮影した原美術館のエントランスの写真を何枚かアップしておこう。閉館までにもう一回行けるといいな。
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