旅とおやじ

旅の途中、気付けばいつもおやじは私のそばにいた。

食堂で何を食べたら良いのか迷っているとき、宿が見つからなくて途方に暮れているとき、世界の片隅で一人ぼっちで感傷的になっているとき…

おやじはいつも旅先で困っている私のところにやってきて必ず手を差し伸べてくれた。
 
寂しいときにはしつこいほど話し相手になってくれたし、一言二言会話をしただけで知らない間にお会計が済んでいたことも何度かある。宿が見つかるまで付き合ってくれたり、ときにその土地の代表として何日かに渡ってこちらが辟易するまで案内をしてくれたおやじもいる。
 
良い場所にはその土地に根付いた素敵なおやじがいる。
おやじはその街の主要キャラクターとしてその土地の風景に溶け込んでいる。
またはその土地に煮詰められて香ばしいオーラを放っている。
 
気づけば私は旅先で景色や街並みを撮るのと同じように香ばしいその土地のおやじを探して撮っていた。
旅の思い出に残っている場所はいつもどこでも良いおやじの写真がある。
 
今、コロナ禍で自由に旅へ出られなくなり、毎日ここではないどこかへ思いを馳せ、旅とおやじを恋しく思っている。
 
恋しさ余ってInstagramにおやじアカウント(kawaemi_oyaji)を開設してしまった。
 

写真を投稿するにあたって自分で思っていたよりも多くおやじを撮りためていたことに驚いている。

いつか「おやじ展」を開きたい。

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